2020.10vol.17
秋も深まりいよいよ冬が間近に迫ってまいりました。
新型コロナウイルスはじめ、感染症予防には手洗いが大変重要です。お仕事の合間やお食事前、帰宅後など頻回な手洗いを行っていらっしゃることと思います。
店舗入り口にはアルコール消毒スプレーが置かれ、手に噴霧してからの入店が新しい日常となっています。
その一方で皮膚科外来では手荒れの相談が急増しています。
今年は例年になく大勢の患者様の手荒れを拝見いたしました。その多くが頻回な手洗いやアルコール消毒が関わる手荒れでした。
しかし手荒れが本格化するのは乾燥する季節です。
これから冬に向かいただでさえ手荒れしやすいうえ、感染症にますます気を付けなければいけない季節ともなり、手洗いの回数も増えるでしょう。手荒れはさらに増加すると見られています。
手荒れは見た目の美しさを損なうばかりでなく、洗い物や洗濯など手が濡れる行為で痛みを伴うため生活に支障をきたします。
さらに手洗いやアルコール消毒によっても痛みを感じるので自然にそのような行動を避けることになり、様々な感染症予防の障壁となる可能性があるのです。新型コロナウイルス対策が重要なこの冬は特に手荒れの予防、つまり日常のハンドケアの大切さが改めて見直されています。
今回は「コロナ禍のハンドケア」と題し、手荒れの原因や対処方法、正しいハンドケアについてお話ししたいと思います。
まず、なぜ手洗いで手荒れが起きるのでしょうか。
皮膚の一番表面にある角質は、保湿成分によって適度な水分を保持し、バリア機能を有しています。
この角質が水に濡れるとスポンジのように内部に多量の水分が入りこみ、一時的に水分を蓄えます。
その後、水分は徐々に蒸発し、同時に保湿成分やもともとあった角質間の水分を奪い、手洗い前より角質内の水分が減ってしまうのです。
これが一日に何度も、となると急激に乾燥し、手荒れの原因となります。
しかし今、手洗いはマスクの着用と並んで最も重要な感染予防方法の一つです。
しっかり手洗いをしながらも手荒れを防ぐ方法をご紹介します。
手洗いには熱いお湯は使わず水かぬるま湯で行いましょう。石鹸やハンドソープは洗浄に効果的ですが適量を心がけ、使いすぎないようにしましょう。
荒れた手には、洗浄力の強いものは避け、肌にやさしいハンドソープをお勧めします。
手のひらだけでなく、手の甲、指の間、爪と指の間、手首までしっかり洗います。
手を洗った後はタオルを押し付けるようにして拭き取りましょう。これが意外にも最も重要なポイントです。水分が残っていると蒸発しさらに乾燥しますのでしっかりと。拭くときにこすらないようにすることも大切です。
出先で手を洗う機会も増えました。外出時には忘れず清潔なハンカチをお持ちになると良いでしょう。
手洗いの後は保湿を行います。
保湿作用のあるクリームをしっかり塗りましょう。
外出時も手洗いのたびにクリームを塗れるよう持ち歩けるサイズのものを常にバッグに入れて置くと良いですね。
私が特にお勧めしているのは「夜のしっかりハンドケア」です。お休み前に指先から手首までたっぷりめにクリームを塗り、綿の手袋をしてお休みください。
朝とてもしっとりして気持ちよく一日が過ごせます。日中に何度も保湿をするのが難しい方にもお試し頂きたい塗り方です。
次にアルコール消毒についてです。
アルコール消毒は優れたウイルス除去の効果が知られていますが、アルコールとともに手の水分を蒸発させ乾燥させます。
また手荒れで傷がある場合は痛みを感じることもあります。その場合はアルコール消毒を避けて水またはぬるま湯で手洗いを行いましょう。手洗いでも十分なウイルス除去の効果があります。
手洗い、消毒は感染予防対策としてこの冬例年にないほどに重要性が叫ばれることとなるでしょう。
正しい手洗い、しっかり拭くこと、それから保湿をぜひセットで心がけ、手荒れしがちな秋冬も美しい手と感染予防を両立させましょう。
嵯峨 真輝 (さが まき)先生
学生の頃から小児皮膚科や女性特有の皮膚科疾患に特に興味を持って学んできました。私自身も妊娠・出産を経験し、子供を育てながら医師の仕事を続けております。