2020.02vol.12
木々に注ぐ日の光もことのほか春めいてまいりました。 今回は糖化(とうか)についてお話ししたいと思います。 糖化という言葉は聞き慣れない方が多いと思いますが、現在皮膚科では最新のトピックとして度々取り上げられています。
「糖化」とは体内の不要な糖とたんぱく質が結びつき、「最終糖化生成物=Advanced Glycation End Products(AGEs)」という物質ができる現象をいいます。 このAGEsは一度できると分解されることがなく体内に蓄積され、糖尿病や動脈硬化、骨粗鬆症の原因の一つとなります。
皮膚はコラーゲン繊維により弾力を保っていますが、このAGEsが皮膚に蓄積するとコラーゲン繊維を硬くして、しわやたるみの原因となり、またAGEs自身の褐色の色を反映して肌の透明感をなくし、いわゆる「黄ぐすみ」を起こさせます。
人は生きている限り糖化を止めることはできませんが、その生成を減らす工夫はここ数年の研究で明らかになってきました。
どのようなことで糖化を防ぐ(抗糖化)ことができるのでしょうか。
ポイントは以下の3点です。
1.血糖値の急上昇を防ぐ
2.抗酸化作用のある食品を摂る
3.飲酒、喫煙を控え、適度な運動、十分な睡眠を心がける
では詳しくご説明していきましょう。
1 血糖値の急上昇を防ぐ
健康な人でも食後は血糖値が上がります。この血糖値の上がり具合が急激だと糖化が起こりやすくなることが分かっています。
この急激な血糖値の上昇を防ぐには以下が有効です。
・三食規則正しく食べる
三食毎日規則正しく食べる人は、食事のころにちょうどホルモンが出て血糖の急上昇を抑えられます。反対に忙しくて食事を抜くと血糖値が長時間下がっている状態となり、そこに次の食事を摂ることで血糖値が急激に上昇してしまいます。
できる限り食事は決まった時間に規則正しく三食頂くようにしましょう。
またよく噛んでゆっくり食べることも血糖値の急激な上昇を防ぎます。
・野菜や副菜から食べる
ご飯やパンなどの炭水化物は熱や力のもととなる大切な栄養素ですが、急激に血糖値を上げやすいことが知られています。最近ベジタブル・ファーストという言葉をよく耳にしますが、これは野菜を先に食べると血糖値の上昇が緩やかになるという食べ方の工夫です。野菜だけでなく肉や魚でもその効果は見られます。一口目は副菜から、を心がけてみてください。
・食後に運動をする
食後はゆっくりしたくなりますが、血糖値は食後30~1時間をピークに上がります。その時に体を動かすことで血糖値の急激な上昇を防ぐことができます。激しい運動である必要はありません。散歩をする、買い物に出る、家の中で運動する、掃除をするなど、ほんの10分、体を動かすだけでも良いでしょう。
2.抗糖化作用のある食品を摂る
モロヘイヤ、ふき、サニーレタス、米なすなど様々な野菜に抗糖化作用があることが分かっています。またハーブティー、ドクダミ茶などなどにも抗糖化作用があるので食事と一緒に飲むと良いでしょう。クエン酸が多く含まれる柑橘類や酢も抗糖化に役立ちます。
3.飲酒、喫煙を控え、紫外線対策、十分な睡眠を心がける
AGEsは飲酒や喫煙、睡眠不足のほか、紫外線など様々な要因によって生成されることがわかっています。健康的な生活は抗糖化だけでなく生活習慣病の予防にもなりますね。
また最近は各メーカーから抗糖化の効果をうたった化粧品が発売されています。肌の上から塗ることで皮膚の糖化物質の蓄積が防げるのは手軽で頼もしいですね。
食事の工夫と健康的な生活に加え、化粧品も取り入れて若々しい肌を目指しましょう。
嵯峨 真輝 (さが まき)先生
学生の頃から小児皮膚科や女性特有の皮膚科疾患に特に興味を持って学んできました。私自身も妊娠・出産を経験し、子供を育てながら医師の仕事を続けております。