2018.11Vol.5
秋らしい気候となりました。お変わり無くお過ごしでしょうか。今回は、加齢による乾皮症についてお話ししたいと思います。日々の診療でも、秋から冬にかけてとても良く拝見する疾患です。
健康な皮膚は、皮膚表面の角質層に適切な量の水分を保っています。角質層の水分は皮膚の透明感や柔らかさ、弾力性を与えるだけでなく、外からの刺激を受けにくくするバリア機能にも役立っています。
ところが、加齢に伴い角質層の水分量が減少すると、皮膚が乾燥し乾皮症となります。刺激に過敏になり、肌に赤みやかゆみを惹き起こしやすくなります。
では、なぜ角質層の水分量低下が起こるのでしょうか。主な原因は皮脂分泌量の低下です。 男性は60才頃、女性は40~50代頃から皮脂の分泌量が急激に減少します。皮脂が少なくなると角質表面の皮脂層(脂の膜)が薄くなり、角質層の水分が蒸発して減少します。また同時に角質細胞間の脂質や角質細胞内の水分を保持する成分も少なくなり、皮膚の保湿能が低下します。加齢により角質細胞の脱落サイクルが延長することで角質層が厚くなることも大きな要因のひとつです。
乾皮症は放置すると皮脂欠乏皮膚炎となることが多く、全身にかゆみを訴える方も多く来院されます。重症化すると治るまでに時間を要します。日ごろからのケアが有効です。一番大切なことは外用により日頃から十分な保湿を心掛けることです。
保湿成分のある化粧品もありますので上手に取り入れると良いでしょう。また室内の乾燥にも気をつけましょう。加湿器の利用をお勧めいたします。それから、意外に大きな原因となっていることが間違った入浴習慣です。刺激の強いボディーソープで体を洗いすぎていませんか。皮脂を落としすぎない刺激の少ない製品で体を優しく洗うよう心がけてみてください。また、熱いお湯に長くつかることもお風呂上がりの乾燥に繋がります。ぬるめのお湯に短めにつかるようにしてください。入浴の際は、保湿成分の入った入浴剤を使うのも良いでしょう。入浴するだけで全身が保湿されます。保湿剤を塗るのを忘れがちな方や、背中など塗りづらいところの保湿に特に効果的です。
乾皮症は殆どの方が加齢により経験する変化ですが、簡単なケアで予防のできる疾患です。寒い季節も快適にお過ごしください。
嵯峨 真輝 (さが まき)先生
学生の頃から小児皮膚科や女性特有の皮膚科疾患に特に興味を持って学んできました。私自身も妊娠・出産を経験し、子供を育てながら医師の仕事を続けております。